実家じまいの進め方
実家じまいでやってはいけない7つのこと|後戻りできない失敗を先に知る
実家じまいで後戻りできなくなる7つの失敗を、公的機関の情報で整理。相続人の合意前の処分、無許可業者、解体補助金の着工前申請、住宅用地特例、相続登記、冬の雪まで。
更新日: 2026-10-02
実家じまいで取り返しがつかないのは、次の7つです。合意前の処分、無許可業者、補助金の着工後の申請、税の思い込み、名義の放置などです。どれも、先に確認すれば防げます。迷ったら、いったん止めて、市の窓口か専門家に確認してください。
7つの早見表
| やってはいけないこと | 先にやること |
|---|---|
| 相続人の合意前に処分する | 全員で話し合い、意向を確認する |
| 書類を確認せず片付ける | 遺言書・通帳・年金書類を1か所に集める |
| 無許可業者に任せる | 市の許可業者を確認し、複数社の見積りを取る |
| 着工後に補助金を申請する | 着工前に市町村へ相談・申請する |
| 税を思い込みで判断する | 解体前に、税額の変化を市で確認する |
| 名義を放置する | 3年以内の相続登記を、司法書士に相談する |
| 雪の季節に動く | 初冬までに作業を終え、冬は管理に徹する |
この記事で分かること
- 実家じまいで、あとから取り返しにくい7つの失敗
- それぞれの根拠(国・県・市の公式ページ)
- 税や法律の判断が必要な場面で、どこに相談するか
実家じまいは、手順を間違えても「やり直し」がききにくい作業です。壊した家は戻りません。捨てた物も戻りません。
この記事は、失敗の多い場面を7つに絞りました。どれも、公的機関のページに根拠があるものです。税や法律の個別判断は、税理士・司法書士・弁護士などの専門家に相談してください。
1. 相続人の合意がないまま、家財や家を処分する
親が亡くなったあとの家や家財は、相続の対象です。相続人が複数いるときは、全員の話し合いで分け方を決めるのが基本です。
話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の調停という手続きがあります。裁判所のページには、遺産分割調停の流れが載っています。
先に処分してしまうと、あとで揉める原因になります。「勝手に捨てた」「あの品は価値があった」といった争いです。
自治体の補助金でも、合意を求めるものがあります。
- 胎内市の空き家等解体補助金は、相続人がいる場合、全相続人の同意を条件にしています。
- 妙高市の特定空き家等除却費補助金は、権利者全員の同意を条件にしています。
やってはいけないのは、全員の了解を取る前に、家や大きな家財を処分することです。
親がご存命のうちは、家の物は親のものです。親の了解なしに処分しないでください。
相続放棄を考えている場合は、さらに注意が要ります。相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内」に、家庭裁判所へ申述します。この期間内に、遺品を処分してよいかどうかは、専門家に確認してください。
2. 貴重品と書類を確認せずに、片付けを始める
片付けを急ぐと、大事な物をごみと一緒に出してしまいます。先に探すのは、次のような物です。
- 遺言書
- 通帳、保険証券、年金関係の書類
- 不動産の権利に関する書類、固定資産税の納税通知書
- 契約書、借入に関する書類
遺言書は特に注意が必要です。封のされた遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立会いのもとで開封する手続き(検認)があります。裁判所のページに案内があります。見つけても、自分で開けないでください。
年金も確認が必要です。年金を受けていた人が亡くなったときは、届出をします。日本年金機構のページによると、提出が遅れると、受け取りすぎた年金を後から返す場合があります。未支給の年金を、同じ生計だった遺族が受け取れる場合もあります。
書類は、捨てる前に「いったん1か所に集める」と決めておくと安全です。仕分けは、そのあとです。
3. 「無料回収」「格安」の業者に、そのまま任せる
家庭から出るごみの収集運搬は、市町村の許可が必要です。環境省のページは、許可のない回収業者を使わないよう呼びかけています。理由として、不法投棄の例があることや、高額な料金を請求される例があることを挙げています。
国民生活センターは、次のようなトラブルを公表しています。
- 定額パックを頼んだのに、作業後に高額な料金を請求された
- 遺品整理で、作業当日に追加料金が出て、見積りの2倍になった
- 「処分しないで」と頼んだ品が、処分された
対策は、国民生活センターが示しています。
- 市区町村のホームページで、許可業者を確認する
- 複数社から見積りを取る
- 追加料金とキャンセル料を、事前に確認する
- 納得できなければ、その場で支払わない。困ったら消費者ホットライン188へ
詳しい分かれ目は、自分で出す?業者に頼む?新潟の実家片付け、分かれ目の5つの基準 にまとめています。
4. 解体補助金を、着工前に申請しない
空き家の解体には、市町村の補助金があります。ただし、公式ページで確認できた多くの制度は、着工したあとの申請を対象外としています。
次は、公式ページにある記載です。
| 市 | 公式ページの記載(要旨) |
|---|---|
| 上越市 | 施工業者との契約・除却工事の前に申請する。申請前に契約・着手すると対象外 |
| 柏崎市 | 解体工事の前に、審査・交付申請・交付決定が必要。決定前に着手した工事は対象外 |
| 魚沼市 | 交付決定前に着手した工事は対象外(契約を含む) |
| 南魚沼市 | 交付決定を受けてから着工する。決定前に着工した工事は対象外 |
受付期間にも注意が必要です。令和8年度は、受付がもう終わった制度があります。
- 十日町市: 2026年4月13日〜5月13日(終了済み)
- 魚沼市: 2026年5月14日〜5月29日(終了済み)
- 村上市: 2026年4月15日〜5月15日(終了済み)
予算に達した時点で終わる制度も多くあります。県内30市町村の一覧は、実家じまいに使える補助金|新潟県30市町村の空き家解体補助金一覧 にまとめています。
長岡市は、個人が申し込める老朽空き家の解体補助を、公式ページで確認できませんでした。市の補助金は、町内会などの地域団体が対象です。「補助があるはず」と思い込んで先に壊さないよう、市の窓口で確認してください。
5. 空き家の「固定資産税」を、思い込みで判断する
固定資産税には、住宅用地の特例があります。新潟市のページによると、課税の基準になる額は、住宅用地の広さで変わります。
- 小規模住宅用地(200平方メートル以下):価格の6分の1
- 一般住宅用地(200平方メートル超):価格の3分の1
思い込みやすい点は、2つあります。
① 空き家を放っておいても、税は変わらない
変わる場合があります。空家法は2023年に改正されました。国土交通省のページによると、特定空家になる前の「管理不全空家」も、市町村の指導の対象です。勧告を受けると、住宅用地の特例が受けられなくなります。
② 解体すれば、税が安くなる
そうとは限りません。南魚沼市の補助金ページに、注意書きがあります。解体後の土地は、住宅用地の特例が適用されなくなり、固定資産税などが上がります。
解体の前に、税額がどう変わるか、市の税務担当で確認してください。売る場合の税金は、国税庁の案内があります。相続した空き家を売ったときは、条件を満たせば、最高3,000万円の控除があります。
- 相続人が3人以上の場合は、控除額が2,000万円です(2024年1月1日以後の売却)
- 売却は、相続開始から3年を経過する年の12月31日までに行います
- この特例の対象は、2027年12月31日までの売却です
- 売却代金が1億円以下であることが条件です
- 1981年5月31日以前の建築であることなど、ほかにも条件があります
適用できるかどうかは、税務署か税理士に確認してください。
空き家の売る・貸す・壊すの比べ方は、新潟の実家が空き家になったら で整理しています。
6. 名義を、親のままにしておく
実家の名義が親や祖父母のままだと、売ることも、補助金を申し込むことも難しくなります。
法務省のページによると、相続登記は2024年4月1日から義務化されました。
- 相続で不動産を取得したと知った日から、3年以内に登記を申請する
- 正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になる
- 2024年4月1日より前に相続した不動産も対象。期限は2027年3月31日まで
遺産分割がまとまらないときは、「相続人申告登記」を申し出る方法があります。申し出れば、申請義務を果たしたものとみなされます。ただし、権利関係を公示するものではありません。売却や抵当権の設定のときは、別に相続登記が必要です。
登記は、司法書士に相談できます。名義の確認は、解体や売却を決める前に済ませておくと、動きやすくなります。
兄弟姉妹で、とりあえず共有名義にする方法もあります。ただし、共有物に重大な変更を加えるときは、共有者全員の同意が必要です(法務省)。決め方は、司法書士や弁護士に相談してください。
7. 冬の雪を見越さずに、日程を組む
新潟では、冬に作業が止まります。そして、雪は空き家の問題になります。
新潟県は、空き家の管理は所有者の責任だと案内しています。雪処理が不十分な空き家には、落雪や倒壊の危険があります。雪が積もった空き家には、近づかないよう呼びかけています。
雪下ろしは、命に関わる作業です。県のページによると、令和6年度の除雪作業による人的被害は137件でした。死亡事故の多くは、一人作業中に起きています。屋根やはしごからの転落が主な原因です。
実家じまいの日程は、次のように考えると安全です。
- 10〜11月のうちに、片付けと業者の見積りを終える
- 冬は、家の状態の確認と、雪の管理の手配にとどめる
- 解体や大きな工事は、雪が解けたあとに組む
制度や費用の詳細は、冬の実家じまいと雪対策 にまとめています。
まとめ
迷ったときは、いったん止めて確認することが、いちばん安い対策です。
よくある質問
実家じまいで、最初にやってはいけないことは何ですか?
相続人全員の了解を取る前に、家や大きな家財を処分することです。あとで「勝手に捨てた」と争いになる原因です。親がご存命なら、親の了解が先です。
補助金は、解体したあとに申請できますか?
公式ページで確認できた多くの制度は、着工後の申請を対象外としています。契約や着手の前に、市町村の窓口へ相談してください。
家を解体すると、固定資産税は安くなりますか?
安くなるとは限りません。南魚沼市のページには、解体後の土地は住宅用地の特例が外れ、税が上がるとあります。解体の前に、市の税務担当へ確認してください。
相続登記をしないと、どうなりますか?
相続で取得したと知った日から3年以内に申請しないと、10万円以下の過料の対象になる場合があります。2024年4月1日より前の相続は、2027年3月31日までです。
「無料回収」の業者に頼んでも大丈夫ですか?
おすすめしません。家庭ごみの収集運搬には、市町村の許可が必要です。環境省は、許可のない回収業者を使わないよう呼びかけています。
遺言書を見つけたら、開けてもよいですか?
封がされている場合は、開けないでください。家庭裁判所で、相続人などの立会いのもとで開封します(検認)。
冬に実家じまいを進めてもよいですか?
雪下ろしは危険です。片付けと見積りは初冬までに終え、冬は管理にとどめると安全です。
次に読む
- 新潟の実家じまい、何から始める?遠方からでも進められる7つの手順
- 実家じまいのお金がないとき|費用を抑える順番と、誰が払うか
- 実家じまいに使える補助金|新潟県30市町村の空き家解体補助金一覧(2026年度)
- 親が元気なうちに始める実家じまい|生前整理の進め方と、新潟で使える窓口
- 新潟で実家を片付ける費用の目安|自分で出す場合と業者に頼む場合
- 県外から新潟の実家を片付ける段取り|帰省2回で終わらせる計画の立て方
- 冬の実家じまいと雪対策|空き家の雪下ろしは誰がやる?新潟の制度と費用
- 自分で出す?業者に頼む?新潟の実家片付け、分かれ目の5つの基準
- 新潟の実家が空き家になったら|売る・貸す・壊すの比べ方と、使える制度
- 実家じまいが寂しい・つらいとき
出典
確認日はすべて2026-10-02です。
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
- 裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
- 裁判所「遺産分割調停」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_07_12/index.html
- 裁判所「遺言書の検認」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html
- 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140731-01.html
- 環境省「廃棄物の処分に「無許可」の回収業者を利用しないでください!」 https://www.env.go.jp/recycle/kaden/tv-recycle/qa.html
- 国民生活センター「こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル」(2018年7月19日発表) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20180719_1.html
- 国民生活センター「不用品回収サービスのトラブル」(2022年11月2日発表) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20221102_1.html
- 上越市「空き家等及び特定空き家等除却費補助金」 https://www.city.joetsu.niigata.jp/soshiki/kenjuu/akiya-jokyakuhojo.html
- 柏崎市「危険な空き家を解体する費用を補助します」 https://www.city.kashiwazaki.lg.jp/kurashi_tetsuzuki/hojo/sumai_seikatsu/47390.html
- 魚沼市「空家等解体補助金」 https://www.city.uonuma.lg.jp/page/1029743.html
- 南魚沼市「南魚沼市空家等除却事業補助金」 https://www.city.minamiuonuma.niigata.jp/docs/48331.html
- 十日町市「空き家等除却支援事業補助金」 https://www.city.tokamachi.lg.jp/soshiki/kensetsubu/toshikeikakuka/4/1/10912.html
- 村上市「空家等解体費補助金」 https://www.city.murakami.lg.jp/soshiki/12/akiyakaitaihojyokin.html
- 胎内市「空き家等解体補助金」 https://www.city.tainai.niigata.jp/kurashi/sekatsu/akiya/kaitai.html
- 妙高市「特定空き家等除却費補助金」 https://www.city.myoko.niigata.jp/docs/31250.html
- 長岡市「空き家対策総合支援事業補助金」 https://www.city.nagaoka.niigata.jp/kurashi/life03/akiya-jyokyo.html
- 新潟市「住宅用地に対する課税標準の特例」 https://www.city.niigata.lg.jp/kurashi/zei/siraberu/koteishisan/juutakuyouti.html
- 国土交通省「空き家対策 特設サイト」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/articles/2024020105.html
- 法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」 https://www.moj.go.jp/content/001444020.pdf
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 新潟県「冬季における空き家からの落雪や倒壊にご注意ください!」 https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/toshiseisaku/akiya-jyosetsu.html
- 新潟県「除雪作業中の事故にご注意ください」 https://www.pref.niigata.lg.jp/site/chiikiseisaku/191025zikoboushi.html